経営成績等の概況
1.当期の経営成績の概況
わが国経済は、好調な企業収益による設備投資の増加基調は続いているものの、労働需要の高まりや物価上昇に加え、為替変動の影響、金利の上昇傾向等のリスクが存在しており、依然として先行き不透明な状況でありました。
当社グループを取り巻く経営環境は、脱炭素への投資ニーズの高まりから脱炭素電源への旺盛な設備投資が見込まれた一方で、当社が長年コア事業としてきた従来型の発電所における工事量の減少、資機材価格や労務費の高騰等によるコスト面への影響及び慢性的な人手不足等も重なり、非常に厳しい状況でありました。
このような状況の中、当社グループは、事業戦略として電力市場に偏っていた事業領域を一般産業・その他市場と再生可能エネルギー関連市場へ拡大する収益源の多様化が重要と判断し、その実現に向け、人的資本の強化を主眼とした2024年度中期経営計画(2024~2026年度)を昨年4月にスタートさせました。
具体的には、「『人』を真ん中にした強くてしなやかなQ'dづくり」を基本方針として、重点
課題の「人材への投資による人的資本の強化」、「お客さまに選ばれるための「Q'd」の磨きこみ」、「当社に関わるすべての人・組織とのつながり強化」に取り組んでおります。
特に営業力・競争力の強化を図るため、営業・積算・施工といった機能別組織への改編や地域に根差した営業拠点となる支店の新設を行い、分散していた情報・知見・スキル等を統合することで、新規顧客や新規領域への効率的な受注活動が可能となり、着実に成果をあげております。
また更なる受注拡大に向けて、顧客への設計支援による仕様決定早期化、最新の知見を取り込んだ積算データベース構築、海外を含む調達ルートの多様化による資機材調達力強化、基幹協力会社との早期工事情報共有による作業員確保の共同シミュレーション等の取り組みを進めました。
この結果、当社グループの受注高は、工場設備増設・更新工事、製油所保修工事、公共施設の空調・電気工事、清掃工場新設・更新工事、公営水力発電設備改修工事、データセンターの電力需要の増加に伴う変電設備新設・増設工事、海外子会社の部品製造事業とのシナジーによる新たな火力発電所の脱炭素化改造工事、原子力発電所再稼働準備工事等の受注があったことから、914億66百万円(前期比42.5%増)となりました。
一方、売上高は、公共施設の空調・電気工事、太陽光分野のオンサイトPPA設備工事、BCP対策工事、集中豪雨による災害復旧工事、バイオマス発電所のO&M事業開始、変電設備新設・増強工事等の進捗があったものの、原子力発電所の安全対策工事や火力・バイオマス発電所の建設工事が一巡し、福島第一原子力発電所処理水関連工事が前年度までに完了したことから、677億22百万円(前期比23.5%減)となりました。
次期繰越高は、1,214億21百万円(前期比24.3%増)となりました。
利益面につきましては、経費縮減や退職給付会計における数理計算上の差異を売上原価、販売費及び一般管理費の減額として計上したものの、売上高の減少等により、営業利益は26億65百万円(前期比32.7%減)、経常利益は33億42百万円(前期比35.9%減)となりました。また、資産の効率化を図るため投資有価証券の売却益を計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は29億0百万円(前期比2.0%減)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
(設備工事業)
受注高は、エネルギー部門や原子力部門の増加により、854億64百万円(前期比46.0%増)となりました。売上高は、エネルギー部門や原子力部門の減少により、616億72百万円(前期比25.7%減)となりました。
セグメント利益は、41億80百万円(前期比58.2%減)となりました。
(その他の事業)
受注高は、60億65百万円(前期比7.9%増)となりました。
売上高は、61億12百万円(前期比12.8%増)となりました。
セグメント利益は、1億13百万円(前期はセグメント損失45百万円)となりました。
2.今後の見通し
今後の見通しにつきましては、労働需要の高まりや物価上昇、為替変動の影響、金利の上昇傾向に加え、米国政府の関税政策による景気減速等のリスクが高まり、エネルギーインフラ事業に携わる当社グループにとっては引き続き厳しい経営環境が継続するものと予想されます。
一方で、「第7次エネルギー基本計画」、「GX2040ビジョン」が閣議決定され、中長期的に
は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)の進展による電力需要増加が見込まれると発表されました。また、再生可能エネルギー、原子力等エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが示されたことは、当社グループにとってビジネス領域を拡大する好機であると考えております。
このような情勢を踏まえ、当社グループは、あらためて市場分析を行い事業ポートフォリオの最適化として、電力需要増加に伴う新設・増設工事が見込まれる変電分野や原子力発電所の再稼働に向けた工事が期待できる原子力分野へこれまで以上に注力してまいります。また、再生可能エネルギー関連市場は非常に大きな市場であることから、引き続き採算性が見込める分野において選択的な受注に取り組んでまいります。これらを進めつつ、最終年度(2026年度)到達目標を達成するため、2024年度中期経営計画(2024~2026年度)で掲げた最も重要な要素である人的資本の強化については、当社社員は勿論のこと、協力会社にもその枠を拡げて取り組んでまいります。
このような状況の中、2026年3月期の連結業績見通しにつきましては、
<連結業績>
売上高 82,000百万円
営業利益 3,900百万円
経常利益 4,100百万円
親会社株主に帰属する当期純利益 3,400百万円
を見込んでおります。
■2023年度■2024年度
(単位 : 百万円 / *は予想)
年度 | 1Q | 2Q | 3Q | 通期 |
---|---|---|---|---|
2024 | 14,895 | 30,541 | 46,462 | 67,722 |
2023 | 20,295 | 41,344 | 63,648 | 88,467 |
■2023年度■2024年度
(単位 : 百万円 / *は予想)
年度 | 1Q | 2Q | 3Q | 通期 |
---|---|---|---|---|
2024 | -367 | -249 | -12 | 2,665 |
2023 | 376 | 1,002 | 2,912 | 3,959 |
1Q:第1四半期 2Q:第2四半期 3Q:第3四半期